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2010-01

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松浦亜弥アルバム『想いあふれて』レビュー

去年前半に買って一度聴いてそのままにしていた作品。少し聴いて「お、いいんじゃないかな?」と思ったけど、そのまま放置していた作品だ。最近気になってちゃんと聴いて見たところ、非常に素晴らしい作品でちょっと吃驚させられた。以下簡単にレビューしたい。

松浦さん、『Naked Songs』→『ダブル レインボウ』→『想いあふれて』と音楽的には確実にステップ・アップしてますね。胸を張っていいんじゃないの。これで成り立っているのなら、松浦さんはこの路線で続ければいいのではないかと思う。

まず気づかされることは、『Naked Songs』や『ダブル レインボウ』で志向しながらも完全には実現しなかったアルバムのトータリティーがぐっと向上しているということ。前二作に存在した曲ごとのバラツキ感、異物感がほとんど無くなって1枚のアルバムでひとつの作品として成立しているのだ。これはハロプロ関係のアルバムにおいてはかなり画期的なことではないだろうか?(刹那的刺激を強調するつんく作品がメインのハロプロ関係作品においては、なかなかこうしたアルバムでのトータリティまで行き着かないことが多い。ヲタには無用の注釈ではあるが念のため)

本作のバック・サウンドとリリックは、AOR寄りの作風――しかも良質なそれ――でほぼ統一されており、そうしたトータリティーがアルバムを聴取するに際して、通奏低音的に心地よい安心感とグルーヴをもたらしている。その結果、耳はイメージを結ぶ統一点としての歌手松浦亜弥の声にフォーカスすることになる。

そして、問題のシンガー・松浦亜弥はもはや単なるアイドルではなく、かと言ってありきたりのディーヴァでもない、その何れも肯定も否定もしない微妙なゾーンにおいて、絶妙な佇まいを見せているように思える(僕は松浦亜弥を技巧的観点からのみ評価するのは、現在の彼女をアイドルとしてのみ評価するのと同様、決定的に間違っていると考えている)。

彼女のボーカルの特徴はこうだ。素早い立ち上がりから真っ直ぐ伸び、やや鼻にかかった儚さを湛えた高音ボーカル――しかしそのまま減衰しない控え目な力強さも併せ持っている。真っ直ぐ伸びる人も、儚いボーカルの人も珍しくはないけれど、このふたつ――ある意味では相反する特徴――を同時に備えている人は少ない。

そんな特権的なボーカルが、このアルバムでは縦横無尽に、まるでよく手入れをした1920年代の名車T型フォードのように各楽曲の展開に沿って軽快にドライブしている。ディーバ系の所謂“上手い”ボーカリストには出せない未完成さから来る儚さを持ちつつも、一方で補完の視線、未完成の美学で解釈し切るには力感と安定性がありすぎる、こうした両義性、揺らぎにこそ松浦亜弥のボーカルの魅力はあり、その特質は本作で存分に発揮されている。

かつての彼女には音量の少なさをカバーするためだと思われるが、歌い上げる際やフェイクの際に、ややもするとビブラートを多用して間を持たせようとした傾向(それはまるで技巧の低い演歌歌手のように醜怪に映った)が存在したが、現在ではそうした問題はほとんど消滅しており(ある程度音量自体が上がったこともあるし、ボーカルのダブル・トラック、コーラス・ワークなどの歌唱以外のアレンジ・ワークでも対応している)、近年の研鑽を窺わせる。

そうした欠点も消化し、アイドルの初々しさとシンガーの安定性をともに兼ね備えつつ、しかし決してどちらか一方には解消されない重層的だが軽やかさを備えた存在へと進化した松浦亜弥のボーカル――それは余人をもって代え難い輝きを放っている。

そこにさらにバック・バンドやリリックなどの音楽的世界観の良質なトータリティーも加わることによって、『想いあふれて』はグルヴィーでメロディアスなシティ・ポップスの名盤となっている。なかでも「レスキュー レスキュー」から「Fallin'」にいたる流れは非常に秀逸であり、思わず聴き入った。それは“ガール”と“ウーマン”の間の揺れ動く時間――クリスタルでアーバンと言い切るにはまだ早い――を切り取る極上のライト・メロウ・シティ・ポップスの世界だ。

本作の松浦亜弥はアイドルという偏見からも、ディーヴァという願望からも逃走するように、儚く透明な声でしなやかなメロディを紡いでいる。そんな特権的な彼女の声が描く運動の軌跡を味わうのはとてもとても幸福な時間だ。『想いあふれて』はハロー系ヲタにはもちろん、一般のポップス・ファンにも自信を持って推薦できる名作である。

本作を手にした誰もが指摘するであろう瑕瑾はアート・ワーク。屋上屋を架すまでもないね。『ダブル レインボウ』よりは進歩していると思うけど……。じっくり時間をかけて、しっかり頭を使って作ってください。

売り上げは芳しくなっかたんだっけ? しゃーないね。目先の数字に一喜一憂することはない。株屋じゃないんだし。この内容であれば、10年後、20年後には間違いなくアイドル・レア・グルーブ名盤として再評価されているはずさ。J-POPに関心のあるリスナーなら一聴して決して損はないと思う。





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後藤時子さん

99年三女真希がモーニング娘。に合格して以降の時子さんの10年。

それはどんな人生だったんだろう?

早くに夫を亡くし、女手ひとつの居酒屋経営で地道に子供たちを守る日々。
平々凡々な日々。

そこに突然転がり込んだ娘の大成功。
真希の加入した「LOVEマシーン」一曲でモーニング娘。は
アメリカンドリームでもありえないような大復活劇を演じる。

しかし、姉を追うように芸能界に入った弟が問題を連発した。
そして弟の引退と同時期に姉の輝きも陰りを見せ始め……。

「興亡」つまり「栄光と衰退」を英語でrise and fall ofなんて 言うけど、
後藤家をまとめる立場の時子さんは、
まさにrise and fallを体言していた人生だったのではないだろうか?



非常に複雑な心境だ。言葉にまとまらない。

初期娘。における後藤真希の奇跡の軌跡に酔い痴れた者は決して少なくないはずだ。

身内であれば、より直接的な影響があっただろう。

しかし、パーティーは永遠には続かない。

「おあいそ」となった時、ヲタならば推しを代えればすむ事であるが、家族ではそうはいかない。

上昇/常勝の奇跡が止まった時、そこに起きたのは一体……



ここで、いや、ここからこそ、後藤の復活劇を見てみたい、
というのは強欲に過ぎるだろうか?

状況は極めて厳しいものに思える。

しかし、ここから奇跡の第二章の幕開けを見せてほしい。

強く生きてほしい。生きねばならない。

後藤真希がもう一度、笑顔で歌える日、それを願ってやまない。



謹んで後藤時子さんのご冥福をお祈りします。


モーニング娘。「女が目立ってなぜイケナイ」レビュー

ああそう言えば、きちんとモーニングの新曲を聴いていなかったな、と気付き、マイミクさんの日記から飛んで、YOU TUBEでじっくり聴いてみた。

そう、かつてあれ程恋焦がれたモーニング娘。の新作リリース――初O.A.日を待ち焦がれラジオの前に正座して聴いたり、それでも我慢できず伝手を辿ってサンプル盤を入手し貪るように聴きまくったりした――は、ここ数年、僕にとって「ああそう言えば……」という存在になってしまっている。忘却に蝕まれつつあるぼんやりとした関心。別れた恋人の誕生日のようなものと言えばいいのか。しかし、真野のアルバムは傑作だったし、モーニングの前シングルもまずまずの出来だった。もしかしたら焼けぼっくいに火がつくだろうか? そんな期待をほんの微量だけ込めつつ今回の新曲に臨んだ。

まず最初に感じたのは、全体的にとっ散らかった印象だ。フラメンコとスビズバ・スキャットの残滓が見て取れないことはない。しかしトータルで何をやりたかったのか? 意図が見えにくい。

サウンドを言葉で外面的に綴るとすれば、モーニングの「3、2、1 BREAKIN'OUT!」――中期ビートルズ・サウンドをサンプリング以降の方法論で再解釈した、なかなかの佳作だと思う――からビートリッシュな要素を抜いて、往年のTV番組「カリキュラマシーン」(「ティンティンTOWN!」の原型か?)のオープニング曲(マイミクさんも指摘していたけど、確かに似ている箇所はあるね)を接合した感じ、とでも形容できるだろうか? 

「カリキュラマシーン」においては、スキャットでスピーディーに歌われていたメロディが、ここではシンセとアコギに置き換えられており――随分と忙しいギターの奮闘にもかかわらず――ナンセンスのユーモアから来るグルーヴィーさは失われてしまっている。スピード感ではなく、ただ落ち着かない印象をもたらしているだけだ。そしてその慌てた感覚、座りの悪さはそのままサウンド全体の印象にもなっている。

一方で歌詞も記憶に残らない。ヴァース、コーラス、ブリッジ……どこにもキャッチーさを見出せなかった。

娘。たちのボーカルは魅力的に映える要素を持ち合わせていると思うが、サウンドとリリックスの両面において、この曲で彼女たちの持ち味を生かせているとは言えないように思う。

何かにトライしている感触は伝わってくるが、それが成功しているようには響いてこない。敢闘精神が先走っているという意味では、c/w向きの曲ではないだろうか。少なくともサビやイントロを鼻歌で口ずさみたくなるような気分にはならないのは確かだ。残念ながらマジックは感じない。

時間があれば、Buono! や真野恵里菜――外部スタッフをメインで起用した彼女たちは近年のハロプロにおける音楽的成功例だと思われる――の魅力と比較して書くつもりだが、ここ数年のつんくの作品は言葉にしづらく、非常に閉じた印象を受ける(余談になるが、アイドル・ポップスは言葉で描写しやすいものほど魅力的なものになるではないか? ということを最近考えている)。そうしたつんくの音楽的自閉性がそのまま出てしまった典型的な例だろう。

「ああそう言えば」からの脱却はまだまだ先のことかもしれない。


▲作詞作曲:つんく、編曲:鈴木Daichi秀行


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P.I.L.再結成ライブ Death Disco (Swan Lake)

P.I.L.昨年末の再結成ライブがかっけー。
昨年末「ジョン・ライドン、PIL再結成でまたもや金儲け」なんて記事が出ていて、気になっていたが……

気になるパーソネルは、
ロバート・エドモンズ(G.)
スコット・ファース(b.)
ブルース・スミス(Ds.)
となっている。

やはりギターとベースが気になる。
P.I.L.サウンドのオリジナリティそのものと言っていいキース・レヴィンとジャー・ウォーブルではない。

しかし、アップされた動画を鑑賞すると、エドモンズのギターは、なかなかキース・レヴィンしていて良い。
ソリッドでメタリック。覚醒しつつ空間を切り裂く攻撃性。
しかし、その怜悧で鋭利な刃は自らにも向けられる、危ういそれ。
さらにモノトーンな色合いなら、なお良し。
多少音色出してさばいている箇所があり、そこにエドモンズの凡庸さを感じる。
まぁ、それはそれで愛らしい。

ベースはもう少し太い音でブリブリしてほしいところ。弱い。
ジャー・ウォーブル幻想再燃。
『メタル・ボックス』発売時、ライドンは、雑誌(おそらく『音楽専科 』だったと思う)に
「『メタル・ボックス』は低音が重要なんだ。日本のファンには是非大音量で低音を楽しんでほしい。
日本人の木の家を揺らすほどのね」(大意)とコメントしていた。

ドラムは原曲に忠実ではあるが、やはりところどころブルース・スミスしてる。
オカズで「とっとっとこ」と前のめり・つんのめリズムする箇所など。
どうしてもポップグループ、リプリグを想起してしまう。

そしてボーカル。
ジョン・ライドンの呪詛するようなボーカルは、往年の迫力を感じさせ、率直に言って素晴らしい。
かつてビートたけしのボーカルに似てるなんていう指摘もあったな。
たけしは「よく知らないんだけど」と言っていた。
それは声を腹から出せない素人ボーカルの魅力だ。
腹から出していないので喉で音程音圧を調整する、その際の微妙な非音楽的効果の妙。
訓練を積んでしまったプロなんぞには出せない魔力。
その最高峰ではないかと。

ちなみに、『メタル・ボックス』缶入りアナログ版はリリース直後に購入した。

「ロッキング・オン」の通販部みたいなところで購入した記憶がある。
45回転とはいえ三枚組アルバムなので、輸入盤屋での相場は1万円近くだったと思う。
貧乏高校生にとっては御座なりに出来ない金だ。
そこで各洋楽雑誌に掲載されている輸入番屋での『メタルボックス』の価格を徹底比較したところ、
最も安かったのが「ロッキング・オン」の通販部。
サービスが良かったので(電話応対がよく、また約束の期日よりも前に届いた)、その後、
そこを通して岩谷宏の本なども購入した。

『メタル・ボックス』はまだ書斎にある。
収納が上手く出来ないアイテムなので、どうしても目立つところに置く他はなく。
配置場所は変わったとは言え、書斎の一角から常にこちらの動向を見つめていたのか、30年間……。

それにしても、この音ならこれからもジャンジャン稼いでほしいものだ。
(96年のピストルズ初来日は酷かった……)

『PLASTIC BOX』でも聴いてみるか。





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ロバート・アルトマン監督『ロング・グッバイ』のこと

 レイモンド・チャンドラー『ロング・グッバイ』を再読しつつ、どうしても引っかかっていたことがあった。

 それはなにも文学的なことではなく、件の小説の映画化作品、つまりロバート・アルトマンが監督した『ロング・グッバイ』をかつて見たかどうか思い出せなくなったのだ。映画のシーンが1ミリも思い出せない。集中して記憶を点検してみたが、頭の中には何の手がかりもない。と言うのは昔の友人の中には熱狂的なアルトマン・ファンも何人かいたので、見たと言うか、見せられたはずなのだ。映画館に一緒に行ったり、ビデオを貸してもらったり。さらには仕事の関係でアルトマンを見なければならない時期もあった(結局それは仕事にはならなかったが)。

 だ・か・ら、俺は当時の時点で日本に紹介されたアルトマン作品はほとんど見てるはず。はず、なのだ。状況証拠的には。
 し・か・し、『ロング・グッバイ』はあまりに何も思い出せない。どうしても思い出せない。著名な小説の映画化なのに。
 フィリップ・マーロウって誰が演(や)ったの? 配役はもちろん、ポスターやビデオのイメージも思い出せない。『M★A★S★H』(サントラ買った)や『ポパイ』は覚えてるんだが……。、実は見てないのかも? と訝しがる。

 基本的には打ち捨ててもこれからの人生にまったく影響も与えない些事でしかないのだが、なんとなく気持ち悪くなって検証したくなった。そこでYOUTUBEで『ロング・グッバイ』のトレーラーを探して確認することに。トレーラーはサクっと出てきた。そいつを確認して、やはりかつて見たことを思い出した。覚えているシーンがあったのだ。疑問はアッサリかいけつしてしまった。しかし、特別な感慨もなかったので、かつて見た時に面白くなかったんだろうと思う。

 これは誰にでもあることだろうけど、俺は映画が面白くないと鑑賞集中力が著しく減退し、ほとんどゼロになる。そしてそのゼロさ加減には非常に自信がある。群を抜いているのではないかと思う。映像が網膜上を通過しているだけで、全く別のことを考えているか、何も考えていないか(すなわち睡眠)に二分化する。ある意味では「悟り」に近いかもしれない。その二分化への沸点が非常に低いと思うのだ。

 そう、映画ってほんとうに覚えてない。

 もともと映画は見ない口なので、ある意味では当然なんだろうが、シネフィルな人たちが振りかざす「映画的記憶」みたいな感性は、俺の場合ゼロだ。関心がないから知識がない。その逆もしかり。貧弱な経験はおしなべて鑑賞直後に過去へと押し戻され、忘却が忘却される。いつまでも純白。まっさらのまっさら。

 シネフィルに憧れて、「今年は最低200本は映画見るぞ!」なんて決心した事もあるけれど、それらはすべてダイエットと同じ運命を辿った。そして、そんな非文化的感性しか持っていないことに焦燥や恥辱を感じる年齢は疾うに過ぎた。逆に、一つの作品で二度楽しめるとか、見るたびに全く違う見方ができるとか、映画痴呆症としての――シネフィルには無理な――新しい感性があるのでは? などと妄想しているが、いかがなものだろうか。




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孵化前

『トランスフォーマー2』『ハンコック』『アイアムレジェンド』『アイアンマン』『AVP2』……近所のGEOが「旧作100円セール」をやっているので微妙な新古作品ばかり見ている。昨日は『スターシップ・トゥルーパーズ2』を。これは04年日本公開なので新古とは言い難いか。VFXの大御所フィル・ティペットが監督。初監督作品だそうな。一作目の「バグ対人間」の惑星間戦争的な大掛かりな設定から、『エイリアン』みたいな密室クリチャーものに変更。うーん、低予算を感じさせる。クリチャー表現は一作目ほどの衝撃はなし。ストーリーはちょっと展開が速いというか、消化不良気味のように感じたけど、最後まで見ると一作目同様皮肉が効いておりまずまず。飽きなかったし、『3』も視るとするか。

 本日は午前中に家事をしながら長めの原稿をあげる。そして息抜きと買い物のために午後から赤羽に出る。mp3プレイヤーからはトン・ゼーのメカニカルな反復吃音ボッサ。意想外に前衛性は感じない。ボッサの範疇に収まる。もちろんそれは肯定的な意味だ。ここら辺の説明で言葉が饒舌流暢に流れ出(いず)るとき、それ即ちトロピカーリアを聴き込んだ時、ということになるのだろう。

 買い物を済ませてから駅前の老舗喫茶店に潜り込む。コーヒーを啜りながら村上春樹訳のレイモンド・チャンドラー『ロング・グッバイ』軽装版。ここのところ小説は古川日出男の長編ばかり読んでいたので、すこし軽いものも読みたくなり。とは言え、解説も含めると700頁もあるか……。学生時代読んだ作品だし、本筋ではない細部の描写を味わってみようと思う。

 赤羽を出てからは、真野恵里菜のアルバムではなくシングルを年代順に聴きながら、北赤羽~浮間舟渡を通って志村坂上の自宅へ。一枚のアルバムの中で歌手として孵化の様子を見事に演じた彼女の『Friends』は傑作であるとは思うけれど、今暫くはインディーズ・シングルや「水色想い」「ジャスミンティー」の恥らいを含んだモノクロームな世界を味わいたい気分。

サウンドトラック/ガー4「Going On!」/カエターノ

○古川日出男『サウンドトラック』読了。
 物語への意思に驚嘆。「まばたき一回のあいだに父親は視界から消えていた。」。冒頭の一文から引き込まれる。この小説の執筆には途方もない量の労働が投入されているはずだが、息切れすることなく最後まで物語ることに成功している。この重層的な物語には、安易なカタルシスに回収されてしまう生の謳歌も人生応援歌もスリルもサスペンスも存在しない。親なし子たちによる破壊への意思、滅亡の儀式が淡々と延々と執拗に描写されているだけだ。けれど、その丹念で暴力的な描写はとてもとても切実で誠実な性質のものだと思う。途方もない労働と切実で誠実な作業。つまり、これは読者に勇気を与える滅びの物語なのだ。

○ガーディアンズ4「Going On! 」聞きました。
 エレポップ・テイストやや多めのアイドル・ソング。Bメロにキャンディーズ節っぽいのが入ってるかな? バックトラックはベースがうねって気持ちいいね。しかしトータルでは過不足なさすぎでアイドル・ポップスとしての面白みを感じない。歌詞もフックなし。初聴、二聴で想起したり口ずさむ箇所はなかった。前作「PARTY TIME」が佳作だっただけにやや残念。




○カエターノ・ヴェローゾを聴き直しています。
 やはりとんでもない巨人ですね、この人。時代に即応してスタイルを頻繁に変えつつ質は落とさない、どころか年々あげて来てる。多作なのに駄作がひとつもない。音楽怪物。ある程度時間をかけて聴き込むつもりです。40枚組BOX SET欲しいっ!


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トロピカ~ル(以下略)


最近トロピカリア(トロピカリズモ)を巡る音楽を聴いています。以下に主に聴いているアーティストと作品を掲げます。

・Os Mutanes
 『Os Mutantes』(1968), 『Mutantes』(1969),『A Divina Comedia Ou Ando Meio Desligado』(1970),『Tecnicolor』(1970),『Jardim Eletrico』(1971),『Mutantes e Seus Cometas no Pais do Baurets』(1972),『 A e o Z』(1973),『Tudo Foi Feito Pelo Sol』(1974), 『Ao Vivo』(1976).
 
 20年程前に1stと2ndを聴いたままにしていたロック・バンドです。当時は「ブラジルで『サージェント・ペパーズ』やってるグループ?! 何故?!」とか「2ndのジャケヤバくね!!!!!!!!」とかStrange文化の文脈で受け取っていました。一緒に聞いたのがセパルトゥラ だったし(笑)。現在は歴史的なパースペクティブに基づいて聴いています。アシッドなサイケ・ロックからシアトリカルなプログレッシブ・ロックまで、北半球のロックの進化を一身に体現しているグループ。トロピカリア(トロピカリズモ)を考える上で非常に重要な存在ではないかと思う。



・Gal Costa
 『Domingo』(1967) ,『Gal Costa』(1969),『Gal』(1969),『Legal』(1970).

 ボサノヴァの女王みたいなイメージを抱いていたら、ソロの初期は意外にサイケしていて一時期愛聴していました。これもMutatesと同時期に聴いていましたが、今回再聴。



・Tom Ze
 『Grande Liquidacao 』(1968),『Tom Ze』(1969),『Tom Ze』(1970),『Complexo de Epico』(1973),『Estudando o Samba』(1976),『Passagem de Som』(2000),『Estudando o pagode』(2005),『Danc-Eh-Sa (Danca dos Herdeiros do Sacrificio)』(2006),『Estudando A Bossa Nordeste Plaza』(2008).

 「MPBのフランク・ザッパ、キャプテーン・ビーフハート」なんて言葉もあるお方。ちょっと気合を入れて集めたいし、聴きたい。00年ごろと06年ごろでしょうか、好事家に一時期騒がれていました。作曲法が独特のようです。彼の自伝映画があるらしいのですが、是非見たいですね。



・V.A.
 『Tropicalia ou Panis et Circensis』(1968).

 ここから全てははじまった。

 カエターノ・ヴェローゾは常に聴いているので除外。カエターノ・ヴェローゾの著作は邦訳でないんですかね? アルバム『 Livro 』のころに出した本。


ビートルズは公式音源は(多分)ぜんぶ聴きました。もう少し聴きたいと思います。

感想:初期がよろしい。パンク。『サージェント・ペパーズ』は良くない、粗が目立つ。
ホワイトアルバムのヒリヒリした崩壊感覚が素晴らしい。ライブがかっこいいですね。ハンディ・ラジカセで聴くとゴキゲンでしょう!

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『アラビアの夜の種族』

●『アラビアの夜の種族』面白すぎる。ヤバイ。不眠不休で読みきったる!!!!!(眠りを拒んだアーダムが如く)。
 喫茶店読み、図書館読みを既に試みたので、これより電車読みに移行する。電車読みとは→最寄の駅から電車に乗り、終点まで降りずに読書。終点で逆方向に乗り換え(ここで良席ゲット)再び読書。最終的には、乗車駅より二駅程離れた駅で降車し、徒歩で帰宅。電車内では何故かサテンや図書館に比し、読書の集中力が格段に向上する。(091228)

●『アラビアの夜の種族』やっと半分位。「災厄の書」やら「砂の書」やらいちいちエドモン・ジャベスくさい。つうかジャベスはエジプト出身だし設定的にも下敷きにしてるっしょ。しかしディアスポラの民たる悲劇のお話はなさそう、今のところ。面白くて興奮してるけどいったん寝る。(091229)

●『アラビア~』メモ:やっと400頁超え。スピードが出ないのは修辞も(ある程度)舐めるように味わっているから。非常に高度な表現力。破綻、襤褸はいまだ二桁に届かず。だいぶメタ・フィクショナルな結構が前景化してきた。とは言え実験的な言語遊戯のそれではなく、骨太な物語性を保持したそれであり、読みやすい。
 むしろ話についての話という構造こそがこの作品においての物語性の源泉なのかもしれない。批評ではなく擬態。異化相対化解体ではなく保持強化再生産。ここそこに入れ子型に仕掛けられた罠たち。だがしかし、唐突に暴力的な放擲の予感……。(091230)

●『アラビアの夜の種族』読了。思ったより時間がかかる。物語は事前の予想よりも過不足ない形で終了した。暴夜(アラビア)の闇黒の中で、書物/建築/都市/戦争が物語られる永遠の幻夢譚。表現力が凄まじい。微細な具体物への描写から抽象的なイメージの奔流まで、止む事を知らぬ豪華絢爛、華美艶麗な言葉の大伽藍が逆立しながら構築されている。死ぬまでにあと3回は読めるだろう。『ドクラマグラ』『黒死館殺人事件』『死霊』の次位を占める、と評価し得る。次はシーケンシャルな流れを無視して細部の拾い読み。微分の悦楽を堪能。(100104)

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プロフィール

vivahiko

Author:vivahiko
横浜市出身。法政大学文学部哲学科卒業。既婚。一男一女に恵まれる。かつて人文科学系/サブカル系書籍編集者にして、モーヲタ(モーニング娘。ヲタク)でした。ここでは主にハロプロを中心とするアイドル音楽批評を書き連ねてみたいかと。
twitter:http://twitter.com/vivahiko

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